今、世界中で「過去のセクハラ」がどんどん浮き彫りになっています。
ハリウッド女優たちも「#Me Too」と声を上げ、「セクハラ反対」を訴えています。
日本でも、大手広告代理店などでのセクハラが発覚。
セクハラは場合によっては、「強姦罪」「強制わいせつ罪」「暴行罪」「傷害罪」など刑事責任を負う場合もあります。
また、性的な噂は名誉棄損罪や侮辱罪に。
民事上でも、被害者の精神的ダメージについて損害賠償責任を負うことになります。
なお、セクハラは会社も責任を負います。
民法715条において「従業員が第三者に損害を与えると、使用者である会社も損害賠償責任を負う」と定められています。
セクハラは従業員だけの問題ではなく、組織全体の問題でもあるのです。
ここでは、職場のセクシャルハラスメントについて解説。
「どんな行為がセクハラになるのか」「セクハラを防ぐにはどうすればよいか」についてお伝えします。
目次
セクハラにあたるのは、こんな行為
職場のセクシャル・ハラスメントは、次の2つに分けられます。
(1)対価型セクハラ
職場で行なわれた性的な言動に対し、労働者が拒否をしたところ、その労働者が不利益を受けることを言います。
例:
- 部下に性的関係を迫ったところ、断られたため、部下を降格させた。
- 営業車の車中で部下の体を触ったところ、抵抗されたため、部下を配置転換した。
- 就職活動中の学生に性的関係を要求し、「応じなければ採用しない」と脅す。
- 取引先の担当者に性的関係を強要し、「応じないと取引を打ち切る」と言う。
(2)環境型セクハラ
職場での性的な言動により、労働者の就業環境が害されることを言います。
例:
- 職場にヌードのポスターを貼る。
- パソコンの壁紙をわいせつな画像にする。
- 職場で不必要に体に触る。
- 「胸が大きいね」「きれいな脚だね」などと言う。
- 「あの人は不倫している」といった性的な噂を流す。
- 「彼氏とはどうしてるの?」「結婚は?子どもは?」「彼女いるの?」などと尋ねる。
以上のような行動が、主な「セクハラ行為」といえますが、むろんこれだけにはとどまりません。
セクハラかどうかは「相手の受け取り方」が大きく関係します。
何気ない一言や行為でも、相手が性的に不快と思えば、セクハラは成立します。
私たちはそのことを肝に銘じて、慎重に行動すべきです。
こんなケースもセクハラになります
無意識にとっている行動や発している言葉が、セクハラになる場合もあります。
たとえば、次のような言動は慎みましょう。
(1)女性社員を「〇〇ちゃん」と呼ぶ
女性社員を「ちゃん付け」したり下の名前で呼んだりすると、セクハラになる可能性があります。
異性に対して、なれなれしい呼び方をするのはNGです。
(2)特定の異性を優遇する
気に入っている異性を仕事に同行させたり、評価上優遇したりするのもセクハラにあたります。
これは女性はもちろん、男性に対しても同じこと。
特定の異性を特別扱いするように見える行動は、厳に慎みましょう。
(3)相手の服装について話す
部下があまりにも派手な服装をしている場合は、注意することも必要です。
ただその場合、「週末、彼氏と会うんでしょ? その時はそんなかっこうしてるの?」などと言うのはNG。
私生活の性的な部分について触れているので、セクハラになります。
あくまで「仕事にふさわしくない」という点にしぼって、注意するようにしましょう。
(4)女性にお酌やお茶くみをさせる
セクハラは、「女は女らしく」「女はこうであるべき」という考えから発生しがちです。
女性社員に限定して、お酌やお茶くみをさせるのはセクハラといえます。
(5)「男らしくない」と言う
男性社員に対して「男らしくないわね」「女々しい」などと言うのもセクハラにあたります。
これも「女性のお酌・お茶くみ」と同様、「男はこうあるべき」という封建的な発想から起こりがちです。
私たちは女性・男性ではなく、「一人の尊厳ある個人」として人を見ることが必要です。
(6)社員を、特定の性別に限定して募集する
社員を募集する際、特定の性別に絞って募集をするのは「性別による差別」にあたります。
たとえば「身長170cm以上の人のみ」といった条件は、実質「男性のみ」と受け取られるので注意が必要です。
なお、「力仕事である」とか「帰宅時間が深夜である」など合理的な理由があれば差別にあたりません。
(7)裸芸をさせる
宴会などで裸芸をさせるのもセクハラです。
裸芸を強いた場合、被害者は大変な精神的苦痛を感じます。
また見せられた社員たちも気分が悪くなります。
裸芸を強いることは、悪質なセクハラといえます。
セクハラを防ぐ対策は?
セクハラを防ぐのは、簡単そうに見えて非常に難しいです。
なぜならセクハラの加害者は、「自分がセクハラをしているという自覚がない」場合がほとんど。
「自分の娘が同じことをされたらどう思うか」と言われても、ピンとこない場合が多いんです。(加害者のなかには「娘と同じぐらいの年齢だから可愛くて・・・」などという輩も・・・)
そこで必要なことは、「どのような行為がセクハラにあたるか」および「セクハラ行為によって、加害者はどんな不利益を受けるか」を書面で明示することです。
「どのような行為がセクハラになるか」を明示することで、「あなたの行為はセクハラですよ」と周囲が指摘しやすくなります。
また、セクハラ行為に対し厳しい態度を示すことを浸透させることが必要です。
「これぐらいならいいだろう」という発想や、性的な言動を「なあなあ」で許す風土を厳しく締め出すことが、組織や管理者には求められます。
さらに男女混合のプロジェクトや新人のOJTは「同性同士で行なう」、あるいは「第三者を置く」といった配慮をすると、セクハラを防げる可能性が高くなります。
セクハラにあった時の対処法は?
セクハラへの対処法は、主に次の4つです。
(1)セクハラにあった状況を詳しく書き留めておく
セクハラにあった日時・場所・加害者の名前・加害者の言動・目撃者などについて、詳細に書き留めます。
ICレコーダーなどを使うのも有効です。
(2)周囲にわかるように拒絶する
セクハラされた、されそうと感じたら、はっきりと拒絶することが大切です。
食事に誘われたり、二人きりで会うよう言われたりしたときに「また次の機会に」などと言ってはいけません。
はっきりと周りにわかるように「お断りします」と伝えましょう。
(3)信頼できる上長に相談する
セクハラにあったら、信頼できる上長に相談しましょう。
社内で味方をつくることも防御策として有効です。
(4)労働基準監督署に相談する
社内に相談窓口があっても、言いにくい場合が多いですよね。
あまりにもセクハラで悩んでいる場合は、労働基準監督署に相談をしましょう。
その際には、セクハラの事実がわかるメモなどを忘れずに。
セクハラは、誰でも加害者・被害者になる可能性があります。
あなたのなかに「女性はこうあるべき」「男性はこうあるべき」という考えはありませんか?
「結婚しないの?」「子どもはまだ?」などと言っていませんか?
コミュニケーションの一環と思って、やたらとボディタッチなどしていませんか?
「上司が相手だから我慢しないと」などと、一人で悩んでいませんか?
自分の姿を見つめ直しながら、1人ひとりが「セクシャル・ハラスメント」に対し厳しい目をもつことが、セクハラ防止への第一歩です。