人を評価するのは、誰にとっても難しいもの。
好き嫌いや相性、噂などに左右され、気がつけば不適切な評価になっていた・・・ということも起こりがちです。
ここでは、そんな「評価のエラー」を解説。
誤った評価をしてしまうのは、次のような「心のくもり」が原因となっています。
目次
ハロー効果
この「ハロー」とは、挨拶のことではありません。
「後光」という意味で、「一つでも良いことがあると、全部良く見える」という意味です。
逆に言うと「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」。
「一つでも悪いことがあると、全て悪く見える」場合も「ハロー効果」にあたります。
評価者に「ハロー効果」のくもりがあると、部下の一部分だけを見て、部下全体を評価してしまうようになります。
たとえば「学歴が高いから」「容姿が良いから」というだけで「仕事ができる」「性格も良い」と判断したり、「英語が苦手」「スタイルが悪い」というだけで「仕事ができない」「生活がだらしない」と判断したりする場合が当てはまります。
このような「ハロー効果」で心がくもると、適切な人事評価はできません。
一人の部下について「あの仕事ではどうだったか」「良い点はどこか」「悪い点はなかったか」など、できるだけ多くの事実から評価をするようにしましょう。
イメージ評価
イメージ評価とは、印象で部下を評価してしまうもの。
「頭が良さそう」「仕事ができなさそう」・・・そんなイメージで評価をすると、公正な評価はできません。
人事評価は、あくまで「評価期間中の事実」を見て行ないます。
イメージで評価をすると、評価が歪むだけでなく、部下の成長も望めません。
評価期間中の行動や実績で評価することで、「次はこの点を頑張ろう」「この能力を伸ばそう」と、部下は成長することができます。
寛大化傾向
部下の評価を、全体的に甘くつけてしまうことです。
弱気だったり、おおざっぱな性格だったりすると陥りがち。
また、フィードバックをめんどくさがる人も要注意です。
「低く評価をしたら、部下にフィードバックする際、何て言えばいいのかわからない。だから甘くつけてしまう」とう人も多いのではないでしょうか。
しかし、評価期間中の事実に基づき評価をしたという自信があるのなら、心を鬼にして低い評価もすべき。
フィードバックでは改善点を伝え、次に期待する旨を伝えましょう。
中心化傾向
寛大化傾向は「S」や「A」ばかりつけてしまうことを言いますが、中心化傾向は「B」ばかりつけてしまうこと。
つまり「普通の評価」ばかりしてしまうことです。
「自分に人を評価することなどできるのだろうか」などと、評価することに自信のないと陥りがちです。
中心化傾向を防ぐには、まず評価尺度と基準をよく頭に入れること。
その後、部下の行動・事実をつき合わせることで、適切な評価をすることができます。
厳格化傾向
寛大化・中心化があれば「厳格化」もあります。
自分にも相手にも厳しい人や、神経質な人が陥りがちなエラーです。
その人の行なった人事評価が、全体的に低すぎる場合は「厳格化傾向」を疑いましょう。
極端化傾向
極端化傾向とは、少しでも良いと「S」、少しでも悪いと「D」などと、極端に高い・低い評価をすることです。
評価に高低があるので、一見きちんと評価をしているように見えますが、公正・適切な評価とはいえません。
評価基準・尺度に照らし合わせて、本当にその評価で良いかどうかをよく検討することが必要です。
論理的誤謬
論理的誤謬とは、関連性のありそうな事柄を一度につなげて評価してしまうことです。
たとえば「知識量が豊富だから理解力もあるだろう」「自己啓発に取り組んでいるから、仕事の遂行能力も高いだろう」「主体的に発言するから実行力もあるはず」などと評価してしまうこと。
これらはいずれも事実ではなく、推論で評価してしまっています。
部下の一部分から推論して評価をするのは、大きな誤りのもと。
1つひとつの事実をよく見て評価をしましょう。
対比誤差
非評価者の行動を、自分の行動・能力と比べて評価してしまうことです。
「俺は入社3年目で、この仕事を遂行できた。お前はできていないからD評価だ」などというのは「対比誤差」。
行き過ぎるとパワハラになります。
過去は美化されがちですし、昔と今とでは環境も違います。
あくまで、全社的に作られた「現在の評価基準・尺度」と「評価者の行動」を照らし合わせて評価をしましょう。
メイキング
メイキングとは、意図的に評価結果を作り変えること。
人事評価の信頼性を根幹から揺るがすもので、最もやってはいけないことです。
評価者があらかじめ、ある部下に対し「A」とつけることを決めておき、その得点範囲に入るよう評価得点を操作する・・・このような操作を「メイキング」といいます。
まず「結果ありき」で事実を歪めるというのは、言ってみれば「冤罪」の構造。
組織全体で防止することが必要です。
人事評価は、社員の人生に関わるものです。
歪んだ評価は、社員も組織も歪めていきます。
全社的に明示された評価基準・評価尺度をよく読み、部下の行動・能力の1つひとつをよく観察し、じっくり照らし合わせながら評価をするよう努めましょう。